月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

大精霊


 よくよく確認してみれば、精霊王の湖の周りは貴重な素材の宝庫だった。

 森のあちらこちらに珍しい薬草が群生していたのは、前人未到の地だからとばかり思っていたが、それはティナの勘違いだったらしい。
 森の奥に進めば進むほど生えている薬草の効果が高いのも、きっと同じ理由なのだろう。

「幻のエフェリーンがたくさん……! 絶滅した花だって本に書いていたのに!」

 ティナは花や草を見るたびに感動の声を上げる。本の挿絵でしか見たことがない植物が目の前に溢れかえっているからだ。

「森の外では見られない植物がこんなに元気に育っているのって、やっぱり……」

《そうよ。ここにはルーアシェイア様の聖気が溢れているからよ》

《ふふ、神聖で清浄な場所でもあるしね》

《外は瘴気が濃いから育たないのよ》

 ティナの予想通り、湖の周りはルーアシェイアの影響を強く受けていたようだ。

 精霊王ルーアシェイアは月を司っていると精霊たちが言っていた。月は植物の成長に大きく関係しているらしいので、清浄な場所との相乗効果で希少な植物でも元気に育つのだと、ティナは予想する。
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