月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。





 * * * * * *




 トールたちがノアの小屋に辿り着いた次の日、朝早くからトールは出発の準備をしていた。

 昨日の夜、散々ワインを飲んでいたノアだったが、朝が早いにも関わらずトールを見送るために起きて来てくれたのだ。

「ノアさん、お世話になりました。とても楽しかったです」

「ふぉっふぉっふぉ。こんなに客人が来るのは初めてじゃったからのう。ワシも楽しくてつい、はしゃぎすぎたわい」

 トールは、ただでさえ人が訪れることがない森の奥で、ノアは寂しくないのだろうか、と少し心配になる。

「えっと……今度はティナと一緒に来ますから。だからそれまで待っていてください」

 しかし何百年もこの森で過ごしているノアに、そんな心配は無用だろう。彼は自分の意思でこの環境を選んだのだと思うから。
 それに、ノアが心配ならティナと一緒に何度でも会いに来ればいいのだ。きっと彼は喜んで迎え入れてくれるはずだ。

「そうさな。嬢ちゃんと坊ちゃんが一緒に来てくれるなら、こんなに嬉しいことはないわいな」

 ノアは笑顔でそう言うと、懐から魔石が付いたメダルのようなものを取り出した。
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