月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「じゃあ、そろそろ行きますね。皆さん、今まで有り難うございました!」

 手を振るティナの横で、トールがぺこりと頭を下げる。

 精霊王ルーアシェイアと精霊たちに見送られながら、二人は湖を後にした。

 ルーアシェイアは、彼らが歩む道に幸あれ、と祝福を贈る。
 二人は自分が祝福した人間なのだ。幸せになってもらわないと困るし、精霊たちも悲しむだろう。

 けれど、微笑みを浮かべ、手を繋ぎながら旅立つ二人の姿は、強い絆で結ばれているかに見えて、そんな心配は杞憂だったか、とルーアシェイアは思う。

 まるで二人一緒なら、どんな困難も乗り越えていける──という確かな自信が、二人から伝わってくるかのようだ。

 そうして、二人はこれからも繋いだ手を離さずに、お互いを支え合いながら生きていくのだろう──たとえそこが、誰も辿り着くことが出来ない、この世界の果てだとしても。





















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