辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 旅は横浜を出港し、サイパン、オーストラリアのケアンズ、シドニーと巡りグアムへ、そして横浜へ帰港する二十六日間の行程。ここへ戻るのは二月上旬の終わり頃だ。

 このお見合いは一度会うだけのものではない。一カ月近く、顔を会わせなくてはならないのだ。普通とは違う。

 豪華客船でゆったりとした時間を過ごし、寄港する都市で観光してお互いのことを知っていければ、政略的な結婚だとしても先に進みやすいのではないかというのが父の意向らしい。

 実は私自身にも目的があって、グアムにあるクレストピアグループのホテルを視察してみたい。ほかのホテルも巡って比較したいのだ。

 はぁ~緊張しちゃうな……。

 男性と付き合ったことがないので、未知の領域である。もちろん部屋は別だけれど、一緒にいる時間は長いものになるだろう。

 横浜のビル群や赤レンガ倉庫とともに、大きなクルーズ船が見えてきた。

 みなとみらいや横浜中華街へは何度か尚子と明日香で遊びに来たことがあるが、そのときには停泊していなかった白いクルーズ船が目に入って、心臓がドクンと一度打った。

 才賀さんに会う時間が近づいてきている。

 国際客船ターミナルにタクシーが止まり、料金の支払いを済ませて外へ出た。運転手がトランクから出してくれたキャリーケース二個をゴロゴロと引きながら、クルーズ船の受付ブースに近づく。

< 18 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop