辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「和泉の肩にかかっている。業績を確認しただろう? 援助がなければそう長くない将来、倒産してしまうかもしれない」

 クレストピアグループがつぶれる……。

「話は以上だ。これは御曹司の写真だ。持っていって後で見なさい。驚くほどいい男だぞ」

 がくぜんとしている私の手に、父が白い封筒を握らせた。

 社長室を出て、すぐ近くのデスクで電話中の満島さんに会釈をし、重役フロアを後にした。

 エレベーターに乗り込み、機械的に一階のボタンを押す。頭の中は整理がつかない状態で、手の中の白い封筒へ視線を落とす。

 どんな人なのか、衝動的に見てみたいと思った。

 でも会う前に顔を見たら、人柄に先入観を持ってしまいそう。

 父は是が非でもお見合いを進めたいのだから、〝驚くほどいい男〟という説明はあてにならない。

 先入観にとらわれないように、写真は見ない方がいいのかもしれない。

 フロントに戻る前に、バックヤードの自分のロッカーへ行き、写真の入った封筒をしまって鍵をかけた。



 渋谷区の自宅へ戻ったのは二十一時三十分を過ぎた頃。

 仕事中は考えないようにしていたが、帰宅中の電車の中や自宅までの徒歩ではお見合いの件が頭の中を占めていた。

 この辺では一番大きな二階建ての自宅の玄関へと入ったところで、櫂が待っていた。

 外は寒くて、玄関の暖かさにホッとする。

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