辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「食べながら見てあげるからちょっと待っててね」

「和泉姉ちゃん、ありがとう!」

 櫂は好奇心旺盛な子で、わからない問題があればすぐに聞かないと気が済まず、向上心があるので頭もいい。

 来年三月の小学校卒業を前に、難関の私立中学校の受験を控えている。

 私は十歳下のかわいい弟にメロメロである。

 コートを脱ぎながらリビングに入り、ソファの背に置いてから洗面所へ行く。うがい手洗いを済ませて戻ると、香織が二階から下りてきていた。

「お姉ちゃん、おかえり~」

「ただいま」

 彼女は母のいる対面式システムキッチンへと歩を進めた。

 香織は公立の中学校に進んでおり、バスケットボール部のレギュラーでがんばっている。髪はショートで、身長も百六十二センチの私よりもすでに五センチ高い。

 ひとり分のプレースマットと箸が置かれているテーブルの隣の席には、櫂が座って待っている。

 いつまでこんなふうに懐いてくれるんだろうかと思う。思春期になって、大きくなればそっけなくなるかもしれない。

 ハンバーグにサラダが添えられたひと皿とご飯、お味噌汁を継母が運び並べる。

「おいしそう。いただきます」

 両手を合わせてから箸を手にして、動きを止めた。

「あ、お父さんは?」

 キッチンへ戻りかける継母に尋ねる。

「今日は遅くなるそうよ。温かいうちに食べてね」

「う、うん」

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