散夏咲秋

 青い夏が終わる。


 それは、世界が終わってしまうような錯覚を起こす。真実ではないけど、ある意味真実かもしれない自分にとっては。


 ――夏が忘れがたくて。終わってほしくなくて。

 桐箪笥から引っ張り出した夏の忘れ形見を、その身に纏う。真っ白な浴衣に、鮮やかな青紫色の朝顔が目を引く。


 去年の夏路地裏の骨董店で、この浴衣を見つけた時に強い運命を感じた。これは必然。なら、買うのは当然だと即購入を決意したのが昨日の出来事のようだ。



 その日決めた約束がある。


 これは、夏の終わりだけ身に纏う。だって特別だから。


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