おじさんフラグが二本立ちました


「みよは、なんさい?」


「十八歳だよ」


「ぼくとかわらない」


「フフ、口説かれているみたいに聞こえる」


「案外そうなのかもよ?」


「チッ」


お姉さんの言葉に舌打ちしたのは彬だった


「おなかすいた」


「皆んなで出掛けようか」


繋いだ手の間に割って入った拓斗の所為で引き離された彬は


「拓斗はママと手を繋げよ」


子供みたいに文句を言い


「こどもはおとなのあいだだよ」


拓斗は大人びた返事をした


もちろん車に乗ったあとも、ちゃっかり彬との間に座ると、私の髪に触れてくる


「ママとちがう」


黒髪のストレートのお姉さんと比べれば
真逆の髪型に興味津々らしい


「触るとクルクルがなくなっちゃうよ」


「なくなるの?」


驚いた顔で見上げてくる拓斗は可愛い

どことなく彬に似ている姿に
小さい頃が想像できた


【ビストロ灯】


クラシカルな煉瓦造りの建物はお洒落で趣きがある
案内されたのは中庭に面した広い個室だった


「みよのとなりがいい」


そう言って椅子を子供用に変えて貰った拓斗は、また手を繋いだ


「ガキはママの隣だろ」


彬とお姉さん、私と拓斗で向かい合って始まった食事は思っていたより楽しく過ぎ


デザートを食べ終えると拓斗とお庭に出た

途中合流したお姉さんは


「拓斗はすっかりみよちゃんに夢中ね」


デートの邪魔をしていることを謝ってくれた


「小さい子供が周りにいないから楽しいです」


模範回答ができる自分に感心しているうちに
ベンチに座るよう手招きをされた


「あのね、みよちゃん」


そう始まったお姉さんの話は
お母さんから聞いたという誘拐の話の謝罪も含まれていた


「彬のことだけど」


「はい」


「あの子は誰も信じてないの」


「・・・え」


「それは家庭環境もあるし、これまでの恋愛とも繋がっているわ」


「・・・」


「最終的には政略結婚の顔合わせまでさせられたことで
気が付いた時には鎧を着ていたの」


「そうだったんですね」


「その彬が、みよちゃんと付き合ってからは
実家に連れて行くとかマンションに入れるとか
兎に角、激変って聞いたの」


「普通のことかと思っていました」


「違うわ、実家はおろか、住んでいるマンションには付き人とばあやと家族以外、蟻一匹も入れなかったわ」


「・・・フフ、そうなんですね」


「みよちゃんがあの子の鎧を脱がせたのね
お試し期間にあの子の良さをわかって貰えると良いんだけど」


「私は何もしていませんよ
鎧を着ているのは私のほうだし・・・」


「ううん。みよちゃんの存在が
確実に彬を変えているの
姉としてお礼を言わせて欲しいわ
本当にありがとう」


お姉さんと会ったことで知り得た彬のこれまでは想像通りだった

私としては・・・どうなんだろう

歩み寄ると決めたばかりなのに
また一歩、置いて行かれた気がしている

それに『繋いで躾直し』というあの言葉が常に頭の中心で居座っていた


「みよ、ぼくとクリスマスパーティしよう」


駆けてきた拓斗は私の手を取った


「ダメだぞ、みよはお勉強だ」


彬も僅かに遅れて駆けて来て
拓斗のオデコをつついた


「えーーーっ、おべんきょうなの?」


「フフ、寒いから中に入りましょう」


お姉さんにぶら下がる拓斗を見ながら
彬は私の肩を抱いて頬に口付けた







< 46 / 137 >

この作品をシェア

pagetop