おじさんフラグが二本立ちました



父からのデータ入力依頼は突然で大抵朝から
車を盾に遠慮がなくなってきているのが分かるけれど、ここは我慢我慢


「今日は駅前開発ビルの会合だから
みよと土居はミーティングルームで入力頼んだぞ」


「はい」

返事の良い土居さんを横目に


「いつ戻るの」


「夜の会食まで組まれているんだ
彬君から聞いてないのか?」


携帯電話は電源をいれないまま数日が過ぎているから聞いているはずがない


「な~にそれ!じゃあ。お昼は豪華ランチ代宜しく」


「はいはい、そう言われると思ったよ
土居、みよのお守り頼んだぞ」


「はいっ」


最後の“お守り”は余分だけれど
五千円札を一枚くれたから許そう


「社長。ご馳走さまです」


「なによっ、人に仕事押し付けといて自分は夜まで何してんだか
これ位当然よね〜」


「まったく。みよは」


ブツブツ言いながら出掛けて行った


そこからは地味な作業を
ミーティングルームのデスクトップに張り付いてコツコツと熟す

リズミカルなキーボードの音を聞きながら少しずつ飽きてきた


「土居さ~ん、お昼何にする?」


「隣でも良いですよ?」


隣というのはランチが有名な定食屋さんのこと
魅力的なメニューが多いから隣でも全然問題ないけれど


「今日はコレを使わなきゃ」
五千円札を広げてみる


「じゃあビーフシチューの美味しい店を見つけたんだけどどうかな」


「うん。それにしよ〜」


やる気のためにお札をモニターに貼り付けて
また地味な作業に没頭した


ーーーーーお昼


事務所でお弁当を食べる姉に手を振ると、土居さんと外へ出た


「みよさんとえりさんはあまり似てないね」


「よく言われる。
みよはお父さん似、えりはお母さん似なの
どっちがタイプ?」


「いやいや滅相も無い」


「本気にしちゃって可愛いね」


「大人をからかうんじゃありません」


「何度も言うけど四つ違いだからね」








< 59 / 137 >

この作品をシェア

pagetop