おじさんフラグが二本立ちました



「みよちゃん手相を見てあげる」


さっと手を取る前田さんは手相を見るというより手を触りたいだけのオヤジに見える



「何が知りたい?」


「えっと、普通は何を聞くの?」


正直、手相にも興味がない


「そうだなぁ。結婚とか」


左隣の体育会系東山さんも興味津々で聞いている


「じゃあそれで」


否定してしらけても困るから
とりあえず乗っかってみた


両脇を男性に挟まれて手相を見てもらっている私に
お姉さんが携帯電話を向けていたのに気付いた時には
シャッター音が響いたあとだった


「結婚は、ん・・・二十歳かな」


「・・・え、早くない?」


「そうだね。学生結婚になるかな
今は彼氏はいるの?」


前田さんの質問にどう答えるべきか悩むうちに


「余計なことは聞かないのよ、前田さん」


私の返事よりお姉さんのツッコミが早かった


「気になるよな?」


東山さんに同意を求めた前田さんは
向かいに座っているもう一人の前田さんにも答えを求めた

その前田Bさんは個人病院の息子さんで趣味がゴルフらしい


「覚えるならいきなりコースに出たほうが上手になるよ」


「・・・ハァ」


ため息を吐き出したところで
マナーモードにした携帯電話が震えた

画面に浮かび上がったのは


【彬】


・・・タイミング悪すぎ


顔を上げた瞬間お姉さんの視線とぶつかった

サッと立ち上がったお姉さんは私の席までやって来て震え続ける携帯電話を取った


「もしも〜し、何?
ちょっと取り込んでるから」


それだけを言うと電源が落とされて戻ってきた


「さっきの写真を送ったから
パニクってるわ」

耳元で囁いてフフと笑った


徐々に盛り上がるお喋りに
薄情な私は彬のことを忘れていった


「みよちゃんは。さっきから何を飲んでいるの?」


「これは烏龍茶です」


「烏龍茶じゃ酔えないだろ」


「だって十八歳だし」


子供扱いは慣れたもの


「じゃあお酒が飲めるか診察しようか」


そう言ったのは向かいに座る前田さんだった


「今度うちにおいでよ診てあげるからさ」


サラサラの髪をかきあげながらニッコリ笑う


「やだ。病院嫌いなの」


「俺と一緒なら怖くないよ
なんなら付き合う?」


ちっとも嬉しくない公開告白に


「前田さん!抜け駆けは許さないわよ」


お姉さんがストップをかけてくれたけれど
おじさんに好かれる自分にため息


コース料理が終わると別の個室が用意されていて
ガヤガヤと煩い一行と移動した


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