【完結】呪われ令嬢、王妃になる
 それから数日、シェリーは妃教育に、そしてジェラルドは公務にと励んでいた。
 そんな二人は食事は共にするものの、しばらくゆっくりと話すことができずにいてシェリーは寂しく思う。

(最近ジェラルド様とお話ができてない。いつもお忙しそうにされていてとても声をかけられない)

「シェリー様! 手が止まっておりますよ!」
「ごめんなさい、クラリス先生。集中できておりませんでした」
「…………シェリー様、この書類を陛下にお渡ししなければならないのですが、これを今から陛下に届けてもらえませんか?」
「──っ!」

 その言葉がシェリーの心を読んでの発言だと気づき、クラリス先生への感謝の気持ちでいっぱいになる。
 椅子を引いて立ち上がってクラリスに近づくと、書類を受け取ってお辞儀をして部屋を後にする。


 壁に花の画が飾られてある廊下を抜けて左に曲がった先の突き当りが、ジェラルドの執務室だった。
 ノックをすると、「入れ」といつもシェリーのかける声色ではなく公務の時のきびきびとした低めの声が聞こえる。
 シェリーはそっと入ると、遠慮がちに執務机で筆を執っているジェラルドに近づいていく。

 しかし、手紙の執筆に集中しているせいかジェラルドはシェリーであることに気づかない。

「書類などはここに置いておいてくれ、後で見る」

 何か声を掛けようとするシェリーだが、あまりに真剣な表情と声色、忙しそうなその様子に彼女は口をつぐんでしまう。
 ジェラルドと話すのはまた今度にしようと考えたシェリーは、言われた通りに書類を机の上におこうとした。

 その時、ふとシェリーの目についてしまった。

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