聖なる夜に王子様と初めての口付けを
「な、何言ってるのよ、そんな訳」
「だよね。そんな訳ないよねー」
千歳は、クスッと笑いながら、より私を強く抱きしめる。聞こえて来る千歳の鼓動の速度は、変わらないのに、私の鼓動だけが、階段を駆け上がるようにスピードを増していく。
「は、離してよ、千歳、苦しいっ」
「……僕のこと、ちゃんと好きだって言えたら離してあげる」
「ばかっ!そんな事言わな」
それ以上、言葉が出てこない。出せない。
千歳の唇が、私の唇に重ねられていることに、少し遅れて気づく。
颯のキスと全然違う。
優しくて、相手を気遣うような甘いキスに、呼吸することも忘れて、ただ唇の感触の心地よさに身を委ねていた。
「はい、おしまい」
千歳は、唇を離すと同時に、抱きしめていた身体を少し離して、私の顔を覗き込んだ。
「お、顔真っ赤。やっぱ僕のこと好きなんだ」
飄々とした態度で、そういうと、千歳は、満足気に笑う。私は、千歳の意地悪に負けないように精一杯の想いを言葉にする。
「千歳のことなんか好きじゃない。千歳のキスが好きなだけ」
「あ、そうくる?じゃあ、今から、せっかくのクリスマスだし、その辺の女の子とキスしてきても大丈夫?」
「ばかっ!何でそういう話になるのよっ」
「実花子が、僕のこと好きって言えば、実花子にしかキスしないけど」