巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

21 闇の気配


 以前雨宿りした廃神殿は、てっきりエル──悪魔を祀っていた神殿だと思いこんでいたけれど、本当は恋愛を司る神様の神殿だったとエリーさんに教えて貰い、私の頭の中は混乱する。


「今考えたら、悪魔信仰の神殿にしては全く禍々しくなかったものね。私、前の街で怖い話を聞いた直後だったから変な想像しちゃってたみたい。あの時サラちゃんまで怖がらせてしまったし」


 エリーさんは国や街を行き来して商売をする商隊の一員で、しかも隊長の奥さんでもある。だからあちこちで色んな噂を耳にするけれど、最近不穏な噂が多いそうだ。


「レフラの森で大きな魔物を見たとか、大森林の半分が消し飛んだとか、そんな噂が多いのだけれど、飛び交う噂を聞いていると何となく『闇』を感じてしまうのよ」


 エリーさんが言う『闇』は、自然現象や魔法属性の闇ではなく、悪意ある悪しきものの『闇』なのだそうだ。


「えっと、それはこの周辺で悪しきものが悪さをしている、と言う事ですか?」


「そうなのよねぇ……これと言った証拠も何も無いのだけれど、商人の勘とでも言うのかしら、最近の出来事に何かの意思を感じるのよね……変な話だけれど」
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