巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

07 取引


 悪魔だと分かっていても綺麗なものは綺麗なので、その蠱惑的な笑顔につい目を奪われてしまう。頼むからもうちょっと顔面レベルを落としてくれないかな……。


「あの神殿の奥で私を見ていたんだ……」


「ええ。貴女は僕の姿を見ていないでしょうけれど」


 ……もしかしてこれは、祭壇を掃除したり献花した事への恩返し的なものなのだろうか。でも掃除と服や絵本を比べると全然対価が釣り合っていないと思うんだけどな。


(という事はやはり、他に何か欲しがっている──?)


「察しのいい貴女ならお分かりでしょうが、僕のことは内密にお願いします。アルムストレイム教の内部に見つかったら厄介ですので」


 悪魔が人差し指を唇に当てて片目を閉じる。普通なら殴り飛ばしたくなるような、そんな仕草さえ格好良く見えてしまう自分に呆れてしまう。


(神殿本部に知られると<使徒>を派遣されちゃうものね。聖騎士団が出張ってきたら、悪魔にとってかなりヤバいかも)


 ちなみに<使徒>とは、穢れしもの──人々に仇をなす異形の存在を狩る戦闘部隊だ。<穢れを纏う闇>と呼ばれる天災レベルの異形は一体で村を三つ滅ぼすという。
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