無口な担当医は、彼女だけを離さない。


ずっと繋がれていた手を放されてしまった。そう思った次の瞬間。


ぐいっと背中から引き寄せられ気が付くと私は世那くんの胸の中にいた。



「え…」

「そろそろ限界。抱きしめたい」

「世那く…?」

「…よかった…」



世那くんの口から洩れたのは安堵したといった感じの声だった。


どれだけ心配、迷惑をかけてしまったかは計り知れない。



「さっき栞麗も散々言ってたけど…それ俺もだから。もう栞麗はとっくに俺の人生の一部なの。離れられるわけないし、離すつもりもない。1人にはさせないって決めたから」

「ほんと、に…?」

「ほんとだよ嘘つく必要ねぇから」

「う…れしい…っ」

「だから泣くな。クマ酷いしどうせ寝てないんだろ。ひっどい顔」



嘘っ⁈


慌てて涙を拭く私。でも泣き止んでから気が付いた。多分あれは世那くんなりの泣き止ませ方なんだと思う。


不器用だけど優しい、私が1番最初に惹かれたであろう世那くんの性格ゆえの言葉だった。

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