数え唄が聞こえる

数え唄が聞こえる

　





　　いちじく　
　　にんじん　
　　さんしょに　
　　しいたけ
　　ごぼうに　
　　むかごに
　　ななくさ　
　　はくさい
　　きゅうりに　
　　とうがん










　その村には子供が一人しかいません。

　一人ぼっちの女の子は、いつも一人で遊んでいました。





　女の子のお気に入りの場所は、【お化け屋敷】と、みんなが呼ぶ、誰も住んでいないボロボロのオウチです。

　大きなモミの木に囲まれたその家は、穴ボコだらけで、畳も黄ばんで毛羽立っています。

　でも、女の子はその家が好きなのです。

　だって、そこに行けば一人ぼっちじゃないからです。

　女の子には、そこに住んでたみんなが見えるのです。






「……こんにちは」

「あっ、あかねちゃん、いらっしゃい」

　としお君です。

「……こんにちは」

　みよちゃんです。

「まあ、あかねちゃん、いらっしゃい。さあさあ、中で遊んでって」

　お母さんです。

「どれどれ、私も一緒に遊ぼうかのう」

　おばあちゃんです。

としお「みよ、きょうは何して遊ぼっか」

みよ「んとね……ままごと」

としお「ヤだね。おれは男だぜ。ままごとなんかしねぇ」

みよ「じゃ、なにすんの？」

としお「うむ……だな……あかねちゃんはなにがいい？」

あかね「私？　んと……おはじきは？」

としお「あ、いいね。おはじきしよう。みよ、おはじき持ってこい」

みよ「ん！」

おばあちゃん「どれどれ、仲間に入れてもらおうかね」

としお「ばあちゃんは、みよの横。あかねちゃんは、おれの横。さあさあ、輪になって、輪になって」





あかね「いちじく～にんじん～さんしょうにしいたけ～ごぼうにむかご～ななくさ～あっ！」

としお「あ、残念。次、みよ」

みよ「いちじく～にんじん～さんしょでしーたけ～ごぼー、あっ！」

としお「次、ばあちゃん」

おばあちゃん「どれどれ。いちじく……にんじん……次はなんじゃったのう」

としお「さんしょうだよ、ばあちゃん」

おばあちゃん「そうじゃ、そうじゃ。……はて、にんじんの次は、なんじゃったかの？」

としお「さんしょうって」

おばあちゃん「そうじゃ、そうじゃ。……はて、にんじんの次は、なんじゃったかの？」

あかね「ふふふ……」

みよ「ゲラゲラ……」

としお「アッハッハ……」

お母さん「あら、楽しそうですね。せんべい持ってきましたよ。あかねちゃん、召し上がれ」

あかね「は～い」

としお「ばあちゃん、せんべいでも食ってろ」

おばあちゃん「そうだね。じゃ、そうするかね。ヨッコイショ」

としお「ばあちゃんの代わりに、母ちゃんやって」

お母さん「はいはい」

おばあちゃん「パリパリっ！」

としお「プッ！　ハッハッハ……！」

　ふふふ……、ゲラゲラ……、フッフッフ……

　おばあちゃんのせんべいを噛む音に、みんなが大笑いです。











　――日が暮れると、一人ずつ消えていきます。

「ハッハッハ！」

　としお君です。

「ゲラゲラ……」

　みよちゃんです。

「フッフッフ……」

　お母さんです。

「パリパリっ！」

　まだ、せんべいを食べてるおばあちゃんです。

　みんな笑顔です。







　――おはじきも消えていきます。















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