あの花が咲く頃、君に会いにいく。
ずっと泣かないと、みんなと笑ってさよならをするんだと決めていたのに、楓の前では涙が溢れて止まらなかった。


ぼやける視界で、体を離した楓がふっと笑うのがわかった。



「当たり前だろ。他の人と恋愛なんてできないしする気も起きない。だからちゃんと責任取れよ」


「ふふっ、何それ…」



楓が私の額に自分の額をくっつけてきた。


やっと楓に触れて、抱きしめてもらえたのにもう光は消えかかってきている。



「シオンって花、知ってるか?」


「え?」


「早乙女と同じ名前の花があるんだ。薄紫色の花で、特に九月が見頃だ。早乙女ともう一度出会えたその時には絶対に見せるから。だから…」



ぐいっと楓の襟を引き寄せ、形のいい唇に自分の唇を重ねる。



「絶対に会いに行くよ。だから…待ってて」



楓は泣きながら笑う私を愛おしそうに見つめると、そっと顔を近づけてきた。


消える寸前の金色の光に包まれながら、もう一度楓と出会えますように、そう願いを込めて目を閉じた。





シオン。
花言葉:あなたを忘れない、遠くにある人を想う、追憶
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