あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「…妹はこれから成長をして、いろんな人に出会ったりいろんなことを体験していく。その姿をそばで見守りたかった。大好きで大切だから。大きくなった妹と、他愛ない会話をしてみたかった…」



そうだ、それが僕の願いだ。



「…そっか。わかった。それじゃあ君は妹さんが大きくなってこっちに来るまで気長に待つといいよ。ちょうど天使様と迷える霊たちの比率が合っていなくて困っていたんだ。妹さんが来るまで君には天使様の仕事を手伝ってもらう」


「…え?」



そうして僕の天使様としての役目が始まった。


いろんな霊と出会い、いろんな未練を見てきた。中には悪霊になってしまった担当の子もいた。


天使様は思っていた以上に過酷で、休みなんてないし給料も出るわけではないけど、それでももう一度妹と会えるその日があると思うだけで僕はいくらでも頑張れた。



そしてその日は、僕が思っていたよりも早く来てしまった。



「次の担当はこの子だ」



名前、顔写真、死亡時刻など個人情報の載っているリストを渡され次の担当者を確認した僕は、思わず唖然とした。


そこに載っていたのは…僕の妹、早乙女紫音だったから。


紫音は交通事故でまだ高校生という若さで亡くなってしまった。


僕が思い描いていたのは、幸せな家庭を築き、家族に見守られながら笑顔でこっちの世界に来る紫音を想像していたのに。



それだけではなく、紫音はどうやら記憶をなくしているみたいだった。


自分の未練はもちろん、生前の記憶がさっぱりなく僕のことも一ミリもわかっていない様子だった。
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