if…運命の恋 番外編Ⅰ「美しい女性」
第2章

美しい女性(ひと)

美しい女性(ひと)

昭和45年頃のお話となります。
坂上美子(さかがみよしこ)さんは薫さんの産みの母親です。
片瀬勇(かたせいさむ)さんは、俊さんの実父です。

人生ってホント不思議なものなのです。今から数十年前にお二人は出会って恋に落ちたのですから。そういう意味では、俊が言ったように、お父さんと趣向が同じっていうのは、満更間違っていないようですね。



第2章「美しい女性(ひと)

「美子ッ!いい加減にしなさい!」


坂上美子(さかがみよしこ)は良家の箱入り娘として大事に育てられきた。
その娘が両親の意見に逆らって、今まさに勘当を告げられようとする一歩前だった。いや、この時勘当してくれていれば、まだ良かったのかもしれない。
しかし、父親が下した娘への罰は監禁であった。

「暫くの間、お前は外へは出さない。二度とアイツに会ってはならん!」
「お父様ッ!酷いわ!ねぇ、お父様、聞いて下さい。ねぇお父様!」
「早く、部屋に連れて行きなさい!」


侍女に付き添われ、強制的に連れて行かれる娘の美子を母は目を伏せて見ないようにした。泣き叫びながら部屋に監禁される娘を不憫に思いながらも、母はどうする事もできなかったからだ。

もう、随分前から娘が恋をしているのを知っていた母だった。
だが、恋もせず、あてがわれた男性と結婚する事になる娘を不憫に思っていたのは事実だ。実際に自分も美子の父親とは、そんな縁で結ばれていたのだから。

良家の子女として生まれた美子には、恋愛は誰とでも気楽に出来るものではないと分かっていたはず、それを知っていながら 母は黙っていた。

坂上家の家長である美子の父親は厳格な人だった。
小さい頃から実業家の子息として厳しくしつけられ、だからこそ一人娘の美子には甘いところもあったが、これが男女間の交際となると違うのだ。

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