真面目な鳩井の、キスが甘い。
 ドタン!ドタッ、ドタタンッ!


 私の言葉を阻むように家の中から大きな物音がした。その場にいる全員が一斉にそちらに目を向ける。


「やだ!お兄ちゃん大丈夫!?」


 慌ててお母さんが中に戻っていくと、玄関より奥の中の様子が見える。


 そこには、階段下ですっ転んだらしい、寝起きの鳩井。


「え……波木さん……?なんで……」


 鳩井が信じられないと言わんばかりの表情で私に言うと、鳩井家が一斉に私を見た。


「あ、あの、私っ、和音くんとお付き合いさせてもらってます!波木日向です!お見舞いに来ました!!」


 ようやく言いたいことを最後まで言えた私は、頭をさげて卒業証書を受け取る時の形でシュバッと手土産のプリンを差し出した。


「「「………………」」」


 鳩井のご家族が、口をぽかんとあけて、ゆっくりと鳩井に目をうつす。



「「「…………えっ?」」」



 
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