真面目な鳩井の、キスが甘い。
 隣の席で、初めて鳩井のクセのある笑顔を見た時からずっと、ずっと鳩井が好きだった。


 周りに合わせて自分を曲げたりしないところとか

 私みたいな適当なうるさいやつにもちゃんと真面目に受け答えてくれるところとか

 球技苦手なとことかカリッカリに細いところすらも全部、全部、好きで。

 ファーストキスだって、言ってしまえば本望だった。

 引っ叩いちゃったのはビックリしちゃったからで、思い描いてたファーストキスとは違ってたからで……

 本当は、嬉しかった。

 この3ヶ月、なかったことにしようとしてもできなかったくらいには、好きだった。初恋だった。





 『お前ら付き合っちゃえば?』


 『ないです』『無理です、ありえないですから』





「……だよねー……」





 こんな不真面目な私となんて……ないよね。





 私が泣きそうになってるのなんか気付きもしない鳩井が、音楽室のドアに手をかけて中に入り、パタン、と閉めた。





「……」





 力が抜けた私は、その場にへなへなとしゃがみこむ。


 ……そっか。

 これでもう本当に、鳩井とは話すことも、必要以上に近付くこともなくなるんだ。



「……っ」



 ついさっき見た鳩井の笑顔を思い出したら、胸がぎゅう、と苦しくなった。



「……無くさなくちゃ」



 この気持ち、無くさなくちゃ。


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