小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
18時の新幹線で東京を出て、2時間半で新大阪に着いた。
駅から歩いてすぐのホテルを予約してあるし、食事も車内で軽く済ませたから、ゆっくりできるはずだ。

「茉祐、バッグ持つよ」

「あ、うん。ありがとう」

ホームに降り、改札に向かう途中で『まゆこ』と呼ぶ声が聞こえた気がした。
落ち着いた、低音の声。

なんだ・・今の・・?

声がした方を振り返ってみたけれど、彼女に視線を向けている男性はいなかった。

「祐一郎? 誰か知り合いでもいた?」

彼女には聞こえなかったのか、特に気にかけている様子もない。
まぁ・・いいか。

「いや、なんでもない。行こうか」


チェックインして部屋に入ってみると、思いのほか室内も広くてベッドも大きかった。

「へぇ・・写真で見るより広々としてていい感じだな」

「でも、明らかにひとりで泊る広さじゃないよね・・。出張清算、大丈夫?」

「ホテルは自腹。茉祐といいところに泊りたかったしね。ほら、少しゴロゴロしようよ」

彼女をベッドに引き込み、抱き寄せる。
普段と違う空間に、なんだか気分が高まった。

「茉祐・・」

彼女を覆うようにして、何度も唇を重ねる。

「茉祐・・今夜はこのまま・・離れなくてもいい?」

俺はそう言うと、彼女の両腕を俺の首に回してキスを深めた。
お互いの舌が、やわらかく絡みつく。

なんとなくいつもと様子が違った気がしたのは、彼女もこの空間に影響されたからなのか、明日の学会を控えた緊張感のせいだと思った。

< 35 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop