小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
前日というか前夜同様に、当直の前半は救急外来にいる時間が長かった。

夜は熱が上がりやすい。
それは子どもも大人も一緒で、日中は緊張感もあってなんとか踏ん張っていても、夕方になって気が緩むと同時に体調が下り坂になることも多いからだ。

「うぅ・・うっ・・うわぁん・・」

辛くてぐずっている子どもも何人かいる。
急げ・・。

「あの・・先生、実は私も具合が良くなくて・・。ここで一緒に診てもらうことはできないですよね・・。この子を誰かに頼んで、また別で診察を受けることも難しいんです・・保険証と診察券は持ってきているので、もし何とかなるのなら・・」

「ああ・・そうですよね・・・・じゃあ、ちょっとだけここで待ってもらうことはできますか? すぐ戻りますので」

救急外来で休憩中のドクターに事情をして、特別に診てもらう。
診察と処方の指示をもらえれば、カルテの記入含め全て俺がやると言った。

ほんの数分のこととはいえ、俺の行動は褒められるものではない。
でも、夜間の緊急時に子どもとその母親を思えば、臨機応変に対処すべきだと考えた。

「無理をお願いしてすみませんでした、先生。ありがとうございます」

「いえ、お子さんもお母さんもお大事にしてください。もしお子さんの熱が何日も下がらないようなら、夜は本格的な検査はできないので、外来の時間帯に診せてくださいね」

「はい、分かりました」

ふたりとも早く良くなるといいな・・。
さて、バレないうちに母親の分の処理も済ませないと。

俺は手早くカルテを記入し、休憩中のドクターに頼まれたと言って処方箋を医療スタッフに渡した。

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