中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

 ミルさんが、巨大な魔法陣を構築した。星が荒野に降る。まるで、世界の終わりみたいに。
 全て砕け散った魔石。その最後の一つが砕け散る。そのネックレスに嵌められていた魔石は、まるでロイド様の髪と瞳の色みたいな赤色だった。

「……ロイド!」

 魔法を放って倒れこんだ、ミルさんの叫びとほぼ同時に、魔人に斬りかかる剣聖の剣。
 そして、星空が散るような、魔力の塊。
 魔人は、正面からそれを受け止める。

 そして、レナルド様が、もう一度その胸に剣を刺す。

「守護騎士か。歴代のように、また、俺を封印するために、命を捧げるのか?」
「お前を封印するためではない、聖女様のためです」
『……それに、魔人、君でちょうど150匹目だ』
「レナルド様! シスト!」
『ほら、早く僕らに引導を渡してよ。最後の異世界の聖女』

 今度こそ、赤いリボンが、魔人を包み込む。
 そのリボンがよく似合う少女と、シスト。お揃いの赤いリボン。それは、幻だったのだろうか。

『さあ、レナルドは、邪魔だから離れてね!』

 ドカッと音を立てて、レナルド様の体を吹き飛ばし、シストが笑う。

『可愛い聖女、力を貸してよ。彼女との約束を果たすから。最後に、異世界の聖女になんて頼らない世界にして、と願った僕の聖女との』

 涙がとめどなくこぼれるのに、嫌なのに。
 それでも、後ろから、誰かが私に力を注ぐ。
 それは、たぶんシストとともにいつも描かれる初代聖女に違いない。

 魔人は、封印される。100年早く。
 それとともに、シストの姿もあっという間に霞んで消えていく。
 私の腕にはめられた、紫の宝石が、最後の魔力を振り絞り、粉々に砕け散った。

 そして、世界は静かになる。
 魔人のいない世界。聖女のいない世界。

 コロコロと、転がってきた箱は、赤いリボンが結ばれた、封印の箱だった。

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