中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

番外編 白い子猫と名前のない少女


 広場には、美しい男女の銅像が建てられている。
 それは、この国を救った聖女と英雄の像だ。
 慈愛に満ちた聖女の姿は清廉で、英雄の姿は荘厳だ。

 そんな、銅像を半眼で見つめる少女が一人。
 その活躍は素晴らしい、素晴らしいけれど、こんな風にさらされてしまうのであれば、聖女様なんて呼ばれたくない。少女はため息をついた。

『ねえ、僕の真奈』
「――――僕のじゃないって、いつも言っているでしょう?」
『そう、かわいいね。真奈』

 かわいいのは、小首をかしげた声の主のほうだと、真奈は思う。
 白い子猫、赤いリボンは、真奈とお揃いだ。
 赤いリボンなんて、子どもっぽい! と拒否してみたところ、子猫が3日間もご飯を口にしなくなってしまったため、仕方なく今日も身に着けている。

「――――シスト、どうして私の名前を呼べるのは、シストだけなの?」

 父も、母も、真奈のことを聖女様と呼ぶ。
 まあ、母は、シストと家族以外には魔女様と呼ばれているから、似たようなものなのかもしれないけれど。

『ふふ』
「え、何がおかしいの」
『同じことを、言うんだなと思って』

 シストは時々、誰かと真奈を比べているようなことを言う。
 それが、真奈にとっては、とても気に入らないのだ。
 ツンッとそっぽを向く。
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