中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

 もしも、元の世界で過ごしていたら、当たり前の日常を過ごしていただろうか。
 誰かと恋に落ちただろうか。

「レナルド様と会えたから……。元の世界に未練がないと言ったら、嘘になりますけど」
「そうね。もし戻れるなら、一度くらい私も里帰りがしたいわ」

 ほほ笑んだナオさんの瞳に浮かんだのは、懐かしい緑豊かで海に囲まれた、あの場所の記憶。
 私たちだけが、それを共有することができる。

「――――聖女の称号は、世界に一つしかない。だから私はもう、聖女ではない。それでも、魔法の力は強くなっているの。だから、この場所を守るわ」

 その言葉にうなずいた時、視線の先に、薄水色の色彩が映り込んだ。

「――――レナルド様!」
「リサ……」

 あんなに会いたかった人が、急に現れたことに驚きつつも、私は子犬のように駆け寄る。

 優しい守護騎士様の微笑み。
 それは、いつもと変わらないようだった。
 でも、その瞳に浮かんでいるのは、鋭い光。それは、まるで何かを覚悟してしまっているようにも見える。
 そして、なによりも、あるべきはずの場所に、その名称がない。
 なぜか、レナルド様のステータスから、守護騎士の名前が消えていた。

「探しました」
「あの、レナルド様、私」
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