中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。
薄緑色の光、呪いに関連する、闇の魔術に特徴的な不気味な色合いだ。
いつも気丈にふるまうリサが、涙でその瞳を潤ませて、俺に縋り付いてきた死霊術師との戦い。
俺にできたのは、彼女の視界を塞いで、戦うことくらいしかなかった。
「……一旦引き返しましょう」
それが、この村にいる人間すべてを見殺しにする提案だと、理解していた。
リサがその提案に同意するなんて、決してないと理解していてもそういわずにはいられなかった。
リサの手を引き寄せる。
「レナルド様。王都に戻ったら、被害が拡大してしまいます。聖女の魔法を使えば、一人ずつだけど、浄化できるはず。……私は残ります」
「っ……原因がわからない、危険です。それに、イヤな予感がします。王都に戻りましょう」
「――――レナルド様。このまま戻っても、往復4日はかかります」
「お気持ちは、変わらないのですか?」
「……ここで、助けることができた誰かを見捨ててしまったら、本当に私がこの世界に来た意味が、なくなってしまうから」
そういわれてしまえば、異議を唱えることなんてもう出来ない。
守護騎士としての立場とか、それ以前に、そんな風に誰かのために戦う彼女。
その役割がなくなってしまったら、リサが壊れてしまうことを恐れたからだ。
「聖女様……。では、約束してください。もし、大きな危険が訪れたら、逃げると」
「そうね。もちろん、逃げるわ」
「――――何があっても、お守りします」
シストをちらりと見ながら、リサの髪をそっと撫でた。
封印の箱であるシストは、おそらく何かを知っているのだろう。
守護騎士をやめて、シストのような存在になればいい。その言葉が、急に蘇る。
一体それは、どういう意味だったのだろうか。