中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら甘めに愛されました。

差し伸べられた前足


 馬車が、着くと同時に、私は表に飛び出す。

「……レナルドは、行ってしまったのね」
「ミル、様? 知っていたんですか」
「ねえ。聖女様なんてやめて、レナルドがくれる物を受け取って、幸せに生きていくのではダメなの?」

 レナルド様が、くれるもの?
 だって、私が、本当に欲しいものは、たぶんその中にない。

「……レナルドの持っている全てが、あなたの物だわ。それに、無事に帰ってくるかもしれない。そうすれば、普通の女の子として、守られながら、幸せに過ごせばいい」

 そんな都合のいい夢。レナルド様は、このままだったら、私の元には帰ってこない。
 聖女じゃなくなったとしても、それくらいはわかる。

「聖女様、あなたの今いる場所は、無理やり連れてこられて、強制的に座らされた椅子。あなたの幸せを、探してもいいと思うわ。私も手伝う」

 聖女なんて選ばずに?
 レナルド様の背中に隠れて?
 確かに、ただの女の子だった。この世界に呼び出されるまで。

 呼び出されて直ぐだったら、きっと、迷うことなく選べたのに。

 桃色の光が、ほのかに瞬いて、次の瞬間周囲を埋め尽くすみたいにあふれ出す。
 その光は、ボンヤリと浮かんでいる、ステータスの、猫の爪で消された文字を、浮かび上がらせた。

『レナルドは、思っていたより強いな。この調子なら、たぶん直ぐ僕の魔力も貯まる』
< 82 / 110 >

この作品をシェア

pagetop