この契約結婚、もうお断りしません~半年限定の結婚生活、嫌われ新妻は呪われ侯爵に溺愛される~

 つまり、よだれを垂らしていた、ということなのだろう。
 私は、慌てて口元を拭った。

「少し、元気がなかったから気になって」
「え? 元気ですよ?」
「そう……? いや、本当は結婚したくなかったのに、もしかしてサーベラス領を助けるために結婚してくれたんじゃないかと……。無理しているんじゃないかと」
「……ディル様」

 確かに、毎日気軽に好きだと告げていた日々に比べて、私はディル様に好きだと言えていない。
 だから、元気がないと思われたのだろうか……。

 ディル様は、私に結婚を断って欲しいと言った。
 それなのに、無理に妻になったりして、許して貰えないんじゃないか、そう思うと今まで通りにするのは難しかった。

「――――でも、好きです」
「え?」
「好きです。期間限定だとしても、一緒にいられて幸せです」
「…………どうして」
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