先生の隣にいたかった



「送っていくよ」



「大丈夫です。
誰かにバレたら、ややこしいので」




花火の後に、先生と一緒にいるところを見られれば、花火を一緒に見ていたのではないか、と疑われてしまう。


あくまで私たちは、学校の屋上で会ったので、花火を一緒に見ることになった。






約束したわけではない。





でも、こんなこと言っても、
誰も信じてくれない。
だからこそ、バレてはいけなかった。




「…誰かにバレるより、




夜道に、いおを一人で歩かせる方が




いやだから」





「私は大丈夫ですよ」









「俺が…嫌だから」






「…でも」




「いいから



…乗って?」




そう言って、少し無理矢理だったが、
私は先生の車に乗り込んだ。




「…すみません」







「俺が、いおを一人で帰すのが嫌だから、
乗ってもらっただけ。

謝ることないよ」




優し過ぎるね、先生は。



でも、先生はみんなにも、
優しくするんだよね。



なのに私は、これが特別なんじゃないかって、勝手に期待していた。






…全部、私は、先生の生徒だからであって、



それ以上でも以下でもないのに。




「…先生、花火一緒に見れてよかったです。
ありがとうございました」




もしかしたら、
来年もまた見れるかもしれない。



そんな、淡い期待を胸に弾ませていた。



きっとこれは、
私だけの願いだったのも分かっていたのに、
この瞬間だけは、

…良いようにしか考えなかった。






もし、これが先生と見る最後の花火でも、
私は見れてよかったと思う。





私にとって、一生の思い出になるから。


こうして、高校一年の夏は終わった。


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