私のお願い、届いてますか?
第10章 望むこと
秀人のお母さんとお父さんが、昼食を食べに外に出るということで、私は秀人のところへと向かう。

まだ聞き慣れない電子音に、胸がざわついてしまう。

ベットの横に座って、目を閉じている秀人の顔を見つめる。

少しは顔色が良くなってきた…のかな。

「河田さん、ご飯、ちゃんと食べれてる?」

秀人の点滴の様子を見にきた看護師さんの声に、俯いていた顔を上げると、心配そうに私を見ていた。

私は、首を横に振って、「…お腹が空かないので…」と小さな声で遠慮気味に答える。

「心配で、食欲でないわよね。あっ、そうだ、ちょっと待ってて」

てっきり、〝無理してでも食べないと〟的なことを言われると思ったから、意外な返答だった。

看護師さんは、少しするとまた戻ってきて、ポケットからチャック付きのビニールの袋を取り出した。

星の絵が描いてあり、絵柄の隙間から中に飴やチョコレートが入っているのが分かった。

「このままあげるわ。お腹空いていなくても、甘いものは別腹、でしょ?」

ふふっと笑った看護師さんに、私は胸がぎゅっと締め付けられて、そっと袋を受け取った。

「…ありがとうございます」

「相村さんが目を覚ました時に、顔色悪かったら逆に心配させちゃうわ」

確かにそうだよね…。

頷いた私を見て、看護師さんは、そっとカーテンの向こう側へと出て行った。

袋をじっと見つめて、ゆっくりと袋の中を見る。私の好きな、サイダー味の飴玉を見つけてそっと取り出し口へと入れた。



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