私のお願い、届いてますか？
頭の中に、秀人の悲しむ表情が浮かんできて、スマホの画面をいじり、秀人の連絡先を押そうとして、直前で指を止める。

もし、研究に没頭してて、まだ知らなかったら、教えてしまうことはかえって研究に支障をきたしてしまうんじゃないかな…。

まだ伝えない方がいいのかな…。

でも…他の人から聞かされるのも、嫌だよね…。

いろんなことが頭の中でぐるぐると回る。

どうしよう…。

私は自分のロッカー寄りかかって、そのまましゃがみ込んだ。

ガチャッ

「聞いた？企画部の河田さんの話」

「うん、週刊誌にすっぱ抜かれたんでしょ？」

更衣室の扉が開いて、私の噂話をしながら女子社員が入ってきたのがわかった。

背中合わせになっているロッカーの扉を開け閉めする音が響く。

私がいるなんて…思ってもいないと思う…。

「朝岡さんって、今注目されてる人なのよね？そんな人捕まえるなんて、どんな媚び売ったのかしら」

ズキっと私の胸に言葉ひとつひとつが突き刺さっていく。

「噂だと、彼氏いるらしいんだけどね、河田さん。やっぱり将来有望な方選ぶってことかな」

違う…。そんなんじゃないのに…。

「やだ、捨てられる彼氏がかわいそう」

「可愛い顔して、なかなか腹黒いのね」

胸が押しつぶされそうなほど苦しくて、喉で息がつっかえる。

苦しい…。




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