クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした

西棟の5階には、西組がアジトにしているホールがある。


普段は一般生徒は立入禁止なのだけれど、今日から演劇祭までの期間、立入禁止令が解かれるらしい。


ホームルームの時間に先生から正式に案内があった。


『今日の放課後、演劇祭の演目発表と役決めをするから、興味がある者は西棟5階に集まるように』


参加は自主判断なんだけど、今ホールには満杯になるほどの生徒が集まっていて、関心の高さがうかがえる。


わたしはそんなホールの状況を、ステージに立って見守る側。


なんでも前に立たされるのが総長の務めらしい。



『えー……みなさん、こんにちは。演劇部3年の小松(こまつ)です』


マイクを通して低音ボイスが響く。


瞬間、生徒たちの視線がばっとステージを向いた。


うわぁ……針のむしろの気分……。


ステージにはわたし以外に佐紺先輩や妃崎先輩も立っているから心細くはないけれど、大勢の前に立つのはいつだって緊張する。


『えーこれより、演劇祭の演目の発表と主要キャラの配役を行いたいと思います』


いい声!と思わず唸りたくなるほどの渋いイケボを鳴らす小松先輩によって、演劇祭の話が進められていく。


始まる前に妃崎先輩からざっと説明してもらった。


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