死グナル/連作SFホラー
ランダム⓶
主婦:川上あいの場合



≪前略…。川口様、メールお問合せありがとうございます。早速ですが、お尋ねの件です。唐突ながら、一度お会いしてお話ししませんか?当方が数年がかりで収集した、同様現象現役同志の生の声、手紙、その他資料類も直にお見せしながら、私なりに得た現時点での見解を直接、お伝えしたいのです。逆に川口さんからも、存じ得ていることをお聞かせだければと思っております。山梨まで出向いても構いません。是非、ご一考ください。東京都在住、川上あい≫


何ともストレートな返信でした。
無論、私は直接面会に同意しました。
ただし、私が都内に出てという条件付きで…。


***


川上さんとお会いしたのは、それから2週間後の土曜日でした。
私たちは上野動物園前で落ち合いました。


で…、西郷さんの銅像前でお話を交わすこととなり、実質3時間あまり…、私たちは例の現象に関わる”談義”を交わしました。
それは、誠に有意義な3時間でした。


「…まずもっては川口さん、この死人の顔寄生という現象は、極めて非一律性を土台に持っているということを認識する必要があると…、私は思うのです」


川上さんは明らかに学生時代はスポーツに励んでいたであろう、すらりとした体躯の持ち主でしたが、何しろポジティブな活力が伝わってくる方でした。


年はだいぶ上でしょうが、あらゆる意味で若いという感じがヒシヒシと伝わってきましたし…。


***


「今、川上さんがおっしゃられた、一様ではないという点は私も同感です。もっとも私の場合、大ざっぱにそんな感じってレベルでしか捉えていませんが…」


「まあ、そんなところですよ、あんな恐ろしい現象に見舞われちゃったら…。幸い、今はネットの時代なんで、同じ問題を抱える者同士が、文字通りアクセス可能なんですもん。これを活かさない手はないわ。だから、もう会っちゃって…。ゴメンなさいね、私せっかちなんで。でも、さすがに九州や北海道の方だったら、こうはいかないけどねー(苦笑)」


私は、あのおぞましい像が宿っていながらの、川上さんのこの明るさに、一種の衝撃を覚えました。
そして感激という感情を禁じ得ませんでした。




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