死グナル/連作SFホラー
ランダム④
主婦:川上あいの場合



「…だからこそなのよ!私たちみたいなあの現象の受け手は、どんどんコミュニケーションをとって、常に推測の材料を増やす努力を重ねていく…。これこそ、こんな現象に一生付き合っていかなきゃならないであろう、私たちにとっては一番大切なことだと思うんですよ、川口さん!」


私は思わず感動しました。


あのおぞましい顔を”招いて”以来…、私は目を閉じることに恐怖し、眠ることもままならない日々が続きました。
それは言いしれぬ不安からの孤独感、そして底知れぬ絶望感にまで達しかけました。


そんな私は、霊能者のHさんと接することができたおかげで、少なくとも孤独感からは解放され、不安と絶望感も和らげられました。


私たちと同じように、本人の自覚しないところで、死者の像を招き入れてしまって苦しんでいる人は他にもいるとわかった今‥。
誰にも相談できず、人知れず悩み苦しんでいる人達を、まずは孤独から救ってあげなくては…。


そして、お互いの症例ケースを教えあって、情報交換を継続していく…。
この輪をさらに広げていけば、その先には、川上さんが言われたように、私たちがこの現象を捉える際の判断材料は質量ともに高まるでしょう。


***


「現代は幸運なことにインターネットの時代だし、それぞれがバラバラで離れていたって、いろんな手段でやり取りができるんですもの。実際、あなたと私もこうして繋がって、互いに有用な情報を教えあえたわ。あなたには、Hさんという霊能者の方からの貴重な見解も伺えた。…あの死後の像は毎回やってくるのではなく、脳に取りこんじゃって、言わばアレは私たちの中に寄生しているって…。凄い仮説だわ!私もそれ聞いたら、即、ピンポンだと思えたし。そうとなれば、私たちだって、この現象との向き合い方も変えられるしね」


川上さんはやや興奮気味で、目を光らせていました。
西郷さんの銅像を前にして…。


「そこでね、これを機会に川口さんもさ、自らネットで発信する側に立ってみたらどう?」


「私も自分から発信…、ですか…?」


ここで川上さんは、突飛な提案を私に投げてきたのです。






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