死グナル/連作SFホラー
連鎖⑧
ケータイショップ店員:清島眞琴の場合



その後、私は”彼らの輪”に加わったわよ。
やっぱりね…、一人じゃあねえ…。
同じ境遇の者は連帯しないとダメっしょ…、ってことに頭を持って行った。


そこに至るには、人間、無力なり…。
これ、あったって。


生きてるうちに死んだ後の自分がなんで今なんだよ、おい、とか…。
私は知らん、なのにどうして私が…、とか…。


この理屈って、私たち現代に生きる人間たちがベースにありきで定まったもんでしょ。


法定速度を守って車運転してて、飛び出してきた犬や猫、きょんを弾いちゃったドライバーが無過失を自身に言いきかせることが出来るのは、今だ我、天動説なりだって。



轢死した犬や猫、きょんやカエル…、車がびゅんびゅんの道路を横断して殺されたとしても、それら、何でどうして私だけとかって繰り言行って死んでくか?


んなことないって。
アホくさ…。


いま生きてるから死んだ後のこと云々なんて、あくびが出る理屈論争は不毛だわ。
今回、この件ふんでそう悟った。
悟りましたって!


***


6プラスワンで、7人となったその輪…。

でも、考えるたび憂鬱になっちゃうわ。
いつの日か、私も生きてるうちに死んだ世界の自分の顔をあの世から持ちだしてくるのかな…。


それで、赤の他人にランダムでその顔を見せて、死への恐怖というものを、知らなくてもいいレベルまで生前に突き付けちゃう。
罪なもんよ、それって。


下手したら、その人の人生に暗闇のカーテン覆っちゃうってことになるし…。
もろ、後ろ向きに人生を歩むコトを、後々死んじゃった私が手を引くってのもねえ…。


***


そう考えると、えらく辛いし、切ないけど…。
20年ちょっとのノー天気な人生で、漠然とではない”人間の死”のカタチを直視しする第3の眼を備えた自分…。


なんか、一皮むけたかも…。
そんな感も有る。


だからこその輪よ。
こんな怖い心象現象に苦しんでるの、ほぼ確実に私ら7人だけじゃない。
一人ぼっちで日々怯えている人はいる…。


なら、何かのきっかけで出会うことができたらさ、私たちの輪に迎えよう。
そのポジティブな連鎖こそ、虫や植物に負けない生を紡ぐ人間のひたむきな無力ながらの一歩一歩ってね…。


***


わー、あれから2年たった…。
で…、その後の私になる。


今現在、浅原さんの”あの顔”、トータルで3回見てる。
正直、初めてじゃないから、最初よりは怖くなくなったとかは、全くない…。
むしろ、どんどん死後という底なし沼の深さが伝わってくるようで、恐さは増してるって。


ちなみに、私のあの世の顔見た人はまだ現れていない。
しかし、連鎖は確実にって感じはする。
それは、その発信元が人間だから…。



第1節/連鎖
ー完ー








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