さよなら、坂道、流れ星

第2話 叶わない

千珠琉が願い事を(かたく)なに教えないのには二つの思い出が関係している。

二人がまだ小学2年生だったある日、千珠琉と昴は子猫を拾った。体が黒く胸元と脚の先だけが白い、いわゆる靴下猫だった。

「すー君!飼って良いって!」
猫を抱えた千珠琉が昴に駆け寄る。
「やったね!」
——ペチッ
二人は小さなハイタッチをした。
——ミャァッ
片手を離してしまったので、千珠琉の手から子猫が床に飛び降りた。
「あ!にげちゃダメ〜!」
すぐに千珠琉が逃してしまった子猫を昴が優しくつかまえて千珠琉に差し出した。
「チズ〜そんなんで大丈夫?ちゃんとお世話するなら飼って良いって言われたでしょ?」
昴に自分が母から言われたことを言い当てられて、千珠琉は昴が母に掛け合ってくれたことを察した。
「うん、大丈夫!わたしがんばる…わぁっだめっ!」
千珠琉は小さくガッツポーズをしようとして、また子猫に逃げられそうになったのをなんとか堪えた。
「すー君、ありがとう。」
満面の笑みで昴にお礼を言った。昴もつられて笑顔になった。
二人で子猫に“ルル”という名前をつけた。
千珠琉と昴は名前の最後の「る」がお揃いだと思っていたので二人の「る」を猫にあげた。
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