ひとりぼっちのさくらんぼ
「何?大丈夫?」
あたしは座ったまま、テレビ画面からお姉さんに視線を移す。
お姉さんの耳が、勢いよく赤く染まる。
「市原くんから連絡が来た……」
そう呟いて、お姉さんは床にへたりこんだ。
「え!?お姉さん、メッセージを読んでみなよ!何て書いてあるの!?」
「待って、待って!呼吸を整えるから!」
お姉さんは深呼吸をして。
スマートフォンの画面を操作した。
あたしも隣で画面をのぞきこむ。
『上条さん、こんばんは。
この間は久しぶりに会えて嬉しかったです。
ゆっくり話せなくてごめんね』
「……これだけ?」
と、あたしは拍子抜けしたけれど。
「充分だよ」
と、お姉さんは画面をうっとり見つめている。
(本当に好きなんだなぁ)
あたしはお姉さんの表情を見て、なんだか嬉しくなった。
寂しそうじゃない。
ちっとも、孤独を感じていない顔。
(良かった)