ひとりぼっちのさくらんぼ

『もしもし、上条さん?』

「はい」

『……あ、いた。わかった。そっちに行くね』



お姉さんと同じように、スマートフォンを耳に当てた市原さんの姿を、あたしは見つけた。

どうやら同じ駅前でも、違う場所で待っていたみたいだった。

お姉さんは駅のロータリーに入る前。

道路に近い場所で待っていたけれど。

市原さんは改札に近い、駅舎の前で待っていたらしい。



「お姉さん、ちゃんと確認しなかったの?」



あたしがじとっと見つめると、
「あー、私、こういうこと多くない?」
と、お姉さんが顔を赤らめた。



(確かに、多いかも)



市原さんが、
「ごめんね」
と、そばに来た。



今日はオフホワイトのニットと、黒い細身のズボン……いや、パンツ、という、シンプルな恰好をしている。



(イケメンって、すごいな)



こんなにシンプルな恰好をしていても、サラッとカッコ良く決まるんだから。



「晴れて良かったね」



市原さんはそう言って、ニコッと笑った。

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