ひとりぼっちのさくらんぼ

公園を出て、市原さんの家を目指す。

電車に乗って帰るって言うから、市原さんとお姉さんは並んで、駅までの道を歩いている。



あたしはそんなふたりを後ろから眺めた。



本当なら両想いになったばかりで、幸せいっぱいのふたりなはずなのに。



(誰であろうと、ふたりの邪魔なんてさせないんだから)




あたしの心の中にフツフツと怒りの感情が芽生えてきた。



周りを見回す。

通行人はいるけれど。

怪しいような人はいないように感じる。



だけど確実にそばにいるはず。



(あの書き込みのタイミング)



市原さんがお姉さんと一緒の時に書き込まれたっていうのが、偶然にしては出来過ぎている。



(見ているんだ)




どこか、近くで。

それは、今もそうなのかもしれない。













駅に着いた。

改札の前。



市原さんは、
「もうここでいいよ」
と言ったけれど、
「もう少し一緒にいる!」
と、お姉さんは改札を通った。



「あはっ」
と、市原さんが笑う。



「何?なんで笑うの?」



お姉さんは本気で不思議そうな表情をした。

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