深紅の復讐~イジメの悪夢~

勇気を振り絞れ



「ねえ、みんな、俺の体操着知らない?」


教室に八神さんの声が響く。


———だれも、答えない。


みんな知っている。

八神さんの体操着はゴミ箱の中であると。


八神さんも何かを察したのか、ゴミ箱に近づく。

ゴミ箱を覗いた八神さんの表情が固まる。

ゴミ箱に手を入れ、取り出した埃まみれの白い布。





———八神さんの、『元』体操着。





切り刻まれた、八神さんの体操着。

クスクスと笑い声が起こる。

麗華とその取り巻きたち。



「あれぇ?八神って服着るんだっけぇ?」



聖理奈が意地の悪い声を出す。


「ブタが服を着てるなんて、おかしくない?」


柑奈も負けじと八神さんをなじる。


「みんなも、そう思うよね〜?」


柑奈がクラスを見渡して言う。

誰も反対しない。

反対すれば、次は、自分の番だ。

みんなが気づいていた。



「誰も反対しないよね!八神、あんたはね、服を着る資格なんて無いんだよ!!」



柑奈が八神さんの服に手を伸ばす。


「やめ…!」


抵抗しようとする八神さんを、彩綾と聖理奈が押さえつける。




奈々美は…奈々美は、少し離れたところで、薄っぺらい笑みを顔に貼り付け、スマホで写真を撮っていた。




八神さんの胸が露わになる。


「豚のくせにいい胸してんじゃん?」
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