契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 母が早くに亡くなり、父は家庭をかえりみなくなった。幼いころはつねに人恋しさを感じていたが、そんな少年時代を送らなければ、結菜のあたたかさを本当に知ることはなかっただろう。
 そもそも東條家に生まれて、鉄道の仕事につかなければ、『グラントレノ あきつ島』に乗ることもなかったはずだ。
 全部つながっている。妻と娘に囲まれた、今日の日に。
 孤独も虚しさも無駄ではなかった。今は俺をここまで生かしてくれた環境に感謝している。

「そういえば、さっき愛菜が『パパ』って言ったんだ」
「ええっ、ほんと!? 動画撮ってない?」
「撮っていない」
「聞きたかったなぁ。まぁちゃん、もう一回『パパ』って言ってみて」
「うぅ、あーう?」

 俺の最愛たち。
 結菜と愛菜。ふたりを一生守ろう。
 いや、彼女たちだけではない。浅野家の人々も、今後新しく迎えるかもしれない子どもも全員、俺が抱えていく。
 まあ、第二子は結菜との相談次第だが……。
 彼女が妊娠中、いろいろ我慢してきたぶん、しばらくは新婚生活を送りたい気持ちも強い。
 俺はひとり悩みながら、我が家の天使たちを眺めていた。
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