契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
たった一夜で身ごもるなんて

1.授かった命


「さむ……」

 首に巻いたマフラーを持ち上げて、鼻先まで隠す。
 東京は夕方から雪が降りつづいていた。久しぶりに積もるかもしれない。
 生まれ故郷では積雪も珍しくなかったけれど、東京ではまれだ。明日の朝の通勤電車への影響も考えなければ。
 帰宅ラッシュの駅のホームで電車を待つ人たちも、心配そうに空を見上げていた。

「はぁ。気圧のせいかしら」

 ここのところ、体調が優れない。
 天気予報によると、東シナ海で発生した低気圧が日本のそばを通過していて、これから大雪になるらしい。気圧も下がっているようだ。
 頭痛がして、だるいし熱っぽい。
 わたしはため息をついて、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ。なんとか席が確保できたので、アパートの最寄り駅まで三十分、目を閉じて休んでいこう。
 秋、冬、年末年始と時間が過ぎるのが早すぎて、いつの間にか一月ももうすぐ終わりだ。
 クルーズトレイン『グラントレノ あきつ島』の旅から、すでに三か月が経っていた。あの豪華列車であったことすべてが、現実に起きたことではなく、うたた寝の間に見た儚い夢のようだった。
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