契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
「どうやら、できちゃった結婚らしいわ。浅野さんと別れる前に、もうできてたみたいよ」
「へええ、早かったのは小平さんの手の出し方だった!」

 なにがおかしいのか、彼女たちは爆笑している。
 わたしはコーヒーカップに入れた白湯をひと口含んで、ため息をついた。
 そうだったのか。奏多さんに別れを切り出されたとき、突然すぎてわけがわからなかった。『ほかに好きな人ができた』『その子と付き合いはじめた』と言われて、それって浮気なんじゃないのとは思ったのだけど、気持ちが離れたのならしょうがないと別れを受け入れた。
 本当は、彼女が妊娠していたんだ。それで、わたしは捨てられた。
 もう彼に気持ちはまったく残っていない。でも別れる前に、すでに裏切られていた現実が改めて生々しく心をえぐる。
 それ以上聞いていられなくて、静かに廊下へ出ていくと同僚たちがぎょっとした目でわたしを見た。

「あっ、浅野さん、これはその」

 わたしは精いっぱい平静を装って微笑んだ。

「ううん、もう小平さんのことはなんとも思ってないから大丈夫。気にしないでください」
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