この胸が痛むのは
外務大臣にアグネスの祖母の前ダウンヴィル伯爵夫人が提出した旅券申請に書かれた帰国予定日を調べて貰った。
届け出には、一回の旅券申請で目一杯の3ヶ月と書かれているらしい。


「そういうのってさ、皆多めに申請するから」

……このまま一度も会えずに、夏が終わるのか。
愕然とした俺をレイが慰めた。



夏休みの課題を片付けながら、スローン侯爵に
言われた事を考え続けた。
ぼんやりとだが、今頭の中にあるのは『外交』についてだ。


フォンティーヌ王女の捜索は2ヶ月目に打ち切られた。
ねじ込むように送り込んだ我が国の捜索隊も帰国した。
王女を乗せて沈んだ船の残骸がリヨンの海岸線に打ち上げられたが、乗客、乗組員、全員の遺体は発見出来なかった。

海の生き物達に喰われたか、それとも。
何処かで今も息を潜めてその日が来るまで、
リヨンの王太子から隠れているのか。
俺には真相はわからないが、兄の王太子は
『何処かへ逃れて、全員無事で居て欲しい』と言っていたが……

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