この胸が痛むのは
「ブレスレットは王妃陛下が俺のパートナーだからと渡しただけで、事情を知ってるスローン侯爵は貰えないと返したんだ」

「でも、クラリスはブレスレットを返したくないと、父と喧嘩しました。
 姉は殿下の事が好きなんだと思うんです」

「それも絶対にない。
 俺に絵葉書をくれて、君に会いに行けって協力してくれたんだ。
 確かにブレスレットの事は好きだと思うよ。
 俺じゃなくて、ブレスレットが好きなんだ。
 何故ならあれをクラリスは……」

そこで一旦言葉を切って、私の耳元で話されました。
『あれを売って、お金にしたかったんだ』と。

お金? 姉には私の倍額のお小遣いが渡されているはずなのに?


殿下のお話の中には、私の知らない姉がいました。
殿下ではない別のひとが好き?
王妃陛下からいただいたブレスレットを売りたかった?
殿下が会いに来てくれたのは、姉のおかげだったの?

訳がわからなくなった私に、殿下はもっと訳のわからない事を仰いました。

「俺は君が好きなんだよ、アグネス」と。
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