この胸が痛むのは
俺に渡せなかったから、護衛に預けたか。
中には、一回り小さな封筒と2つ折のメモが入っている。
先ず封筒を開けると、薄紫のカードが入っていて、やはり愛の言葉と俺の名前が記されていた。
なんて……覚悟はしてたが、これは。

何と言っても、色が薄紫なのはひどい。
普段から、俺が個人的な手紙やカードに用いてる色だ。
それを知っている人間なら、容易く俺が出した本物だと思うに違いない。

これはここで破くより、王太子に見せた方がいいか。
確認確実が好きな兄本人が破いた方が、あれこれ聞かれるより早い。
同封されたメモの方にはクラリスが走り書きしたように、要点だけが綴られていた。

『受け取りは母が出掛けた後なので、気付いていません。
 使用人達には、妹への内緒の贈り物を代わりに受け取った事にしてありますので、妹に知らせる者はおりません。
 明日は祖母によばれていて、動けませんが、明後日以降にアローズへ返品に参ります
 父や弟にも話が漏れることはありませんので、ご安心を』

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