この胸が痛むのは
それを確信している。
執拗に貴族街を抜けて坂道の途中まで追いかけたのなら、誰でも良かった訳じゃなくて、スローンの馬車だと認識している。
貴婦人を乗せた馬車を煽るような行為は、友人の悪戯の域を超えている。

それ程親しくはないが、馬車、もしくは御者で。
それが侯爵家のものであるとわかっていた……どこかで犯人は何度も、ふたりの内どちらかと接触している。
知り合い程度の関係性か。

どこまで自分のした事がばれているのか心配でありながら、それでも残された遺族の様子も目にしたくて。

犯人は必ず、明日の葬儀に現れる。
それを確信している。


 ◇◇◇


「俺は参列しないし、王家からは花を贈る。
 お前が友人なのは周知されているから、出席しない方が不自然だし、警備も最低限で済むから、侯爵にもそれ程負担はないな」


俺は第3王子で身軽な身の上だが、王太子が参列すると警備の数は3倍必要になる。
第2王子のギルバートなら2倍だ。

これはまた、あれだ。
『俺の代わりに、ちゃんと見てこい』だな。


「学園の後輩だからと、ジニアも参列したいそうだ。
 馬鹿な真似はしないと思うが、見張っててくれよ」


何が後輩だ、5学年も離れててそんなに親しくないだろ。
また噂のネタにするつもりか。
王家の野次馬バージニアも、見張れとは。
俺の負担が多過ぎる。
俺の負担は自然とカランとレイに流れていくから、バージニアはカランに見張らせよう。
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