この胸が痛むのは
「だから前々から注意したじゃないか。
 せめて、毒には身体を慣らせておけよ、って。
 苦しいからとサボっていただろう?
 食べ物だけじゃないぞ、着るドレスにも、用意された化粧品にも、手を洗う湯にも気を付けないと駄目だからな?」

「……」

「こちらからは誰もお前に付ける事は出来ないから、ひとりで頑張るんだよ?
 お前なら、あんなキリンのアグネス嬢より、
うまくやれると信じているからな?
 ちゃんと言うことを聞いて、可愛がって貰えよ?」

バージニアは俺の腕の中で、しゃくりあげながら。
途切れ途切れに訴えた。


「嫌です、嫌……お兄様……む、無理です……」

「ちゃんとお詫びは必要なんだよ……
 ジニアもローラ嬢にそう言ったんだろ?
 お前が言ったんだから、守らないとな?
 それに……これが嫌なら、毒を賜るしかなくなるぞ」


毒を賜るしか、と聞いて、腕の中の妹が強張った。
ここまで来ても、自分の罪がどれ程のものか、
わかっていなかったんだ。
守られると言うことが、こんなにも愚かにしてしまうとは。



怒りに憐れが少し混じる。
でも、これだけは伝えよう。
お前が俺に直接お願いした。
兄として、その願いは必ず叶えてやる。


「もしも、お前が先に辺境で、死んだら。
 俺はカサブランカを、たくさんたくさん贈る
から」


……俺は、お前のその顔が見たかったんだ。  

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