この胸が痛むのは
そして、ようやく姉にお言葉を掛けられました。


「真実ではない、とすると。
 私は偽った夫人と、それを知っていた貴女を罰しようと思うのだが?」

「畏れながら、何故私がこの様な事を申し上げるのかをお聞きいたただけますか?」

「貴女からの願い等、聞くつもりはない」

聞いたことの無いアシュフォード殿下のお声でした。


「レディ、君はどう思う?
 その願いを私は聞くべき?
 君がそれを願うなら、聞いてもいいよ」

姉に向けた厳しい声音を一転して、殿下は優しく私にお尋ねになりました。
ですが、それを嬉しく思うような余裕は私にはありません。


「お願いです! お願いします!」


私の必死のお願いを、殿下はお聞き届けてくださって、給仕の方達に下がるように、お命じになりました。
サンルームには、殿下と私達姉妹、護衛騎士様と侍従の5人だけとなり、ようやく殿下は姉に頭をあげることをお許しになりました。

頭を上げて、よろめいた姉を侍従が支えました。


「手短に話せ」
< 35 / 722 >

この作品をシェア

pagetop